『Happy Ball のおはなし|あげたらふえる、しあわせのひみつ』
親子で読めるやさしい物語。
あげることで増えていく、しあわせの不思議を描いたおはなしです。

むかしむかし、
大きな池と風車のある、ちいさな村がありました。
朝になると、風車はくるくる回り、
池の水はきらきら光ります。
その村には、
しあわせボール(Happy Ball)と呼ばれる
ふしぎなボールがひとつありました。
まるくて、かるくて、
手のひらにのせると
ほんのりあたたかくなるボールです。
1.なげたら、かえってくる?

ある日、
ちいさな男の子・リクが
村のひろばで、そのボールを見つけました。
「これ、だれのだろう?」
そっと持ち上げると、
ボールは ぽわん とやさしく光りました。
そこへ、おばあさんがやってきました。
「それはね、
あげたらふえて、
もらったらまたあげたくなる、
ふしぎなボールなんだよ」
リクは、きょとんとしました。
「え?
あげたら、なくなるんじゃないの?」
おばあさんは にっこり笑います。
「ためしてごらん」
2.リク、ためしてみる
その日、リクは
ひとりでさみしそうにしていた
女の子のミナを見つけました。
リクは少しだけドキドキしながら、
ボールを差し出しました。
「これ、きみにあげるよ」

ミナが両手で受け取ると、
ボールは ふわっ とあたたかく光りました。
「ありがとう!
なんだか、こころまで あったかい!」
ミナがにっこり笑った、そのときです。
こんどはリクの胸の中が、
ぽんっ とやさしく光りました。
「あれ……」
リクは、自分の胸に手をあてました。
「あげたのに、
なんだか ぼくのほうが
もらったみたいだ」
おばあさんの言ったことは、
ほんとうでした。
3.ミナから次の人へ
次の日、ミナは
道で転んで泣いている子を見つけました。
ミナは、昨日リクにもらった
あのあたたかさを思い出しました。
そして、そっとボールを手渡しました。
「だいじょうぶ。
これ、どうぞ」

するとまた、
ボールは ぽわん と光りました。
泣いていた子は、
少しずつ笑顔になっていきました。
そして今度は、
ミナの胸の中が
じんわりあたたかくなりました。
「ほんとだ……」
ミナは、うれしくなりました。
しあわせボールは、
村のあちこちへ転がっていきました。
だれかが渡せば、
だれかが受け取る。
受け取った人は、
また次のだれかに渡していく。
そのたびに、
心に小さな光が灯りました。
4.Happy Ball のひみつ
しばらくして、
リクはふしぎなことに気づきました。
「さいしょのボールは
ひとつだけだったはずなのに……」
村の広場にも、
橋のそばにも、
家の前にも、
小さなあたたかい光がありました。

まるで村じゅうに、
しあわせボールが増えていったみたいでした。
おばあさんは、やさしく言いました。
「そう。
しあわせボールは、
渡しても減らないんだよ。
だれかにやさしさを渡すと、
その人の心にも、
自分の心にも、
新しい光が生まれるからね」
リクは、
もう一度ボールを見ました。
それはただの玉ではなく、
やさしさのはじまりみたいに見えました。
5.世界はキャッチボールでできている
それから村の人たちは、
少しずつ気づいていきました。
やさしさは、
なくなるものじゃない。
だれかに渡すと、
むしろ広がっていくものなんだ、と。
だれかがやさしさを投げる。
だれかがそれを受け取る。
受け取った人は、
また次のだれかへ渡していく。

家から家へ。
人から人へ。
村のあちこちへ。
やさしさの光は、
ぽつぽつと広がって、
やがて村じゅうを
あたたかい色に染めていきました。
みんな、少しずつ笑顔になりました。
リクは空を見上げて、
そっとつぶやきました。
「もしかして世界って……
やさしさのキャッチボールで
できてるのかもしれない」
そのとき、
ボールはまた
やさしく ぽわん と光りました。
ほんとうにその通りだよ、と
答えるみたいに。

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