大事にするとは、可能性を見つけ直すこと

大事にするとは、可能性を見つけ直すこと
「大事にしなさい」
子どもの頃から、何度も聞く言葉です。
おもちゃを大事にしなさい。
本を大事にしなさい。
服を大事にしなさい。
道具を大事にしなさい。
人を大事にしなさい。
でも、「大事にする」とは、ただ壊さないことではありません。
綺麗にしまっておくことだけでもありません。
手元に残しておくことだけでもありません。
やさしい言葉をかけることだけでもありません。
本当に大事にするとは、そのものや、その人の可能性を見つけ直すことです。
自分にはもう必要ない。
今の場所ではうまく使えない。
このやり方では力を発揮できない。
だから価値がない。
そう決めてしまうのは、早いです。
モノにも、人にも、場所があります。
役割があります。
向き不向きがあります。
力を発揮できる場面があります。
今ここで使えないからといって、どこでも使えないわけではありません。
たとえば、早く走ると気持ちがいい人がいます。
その人に、誰よりも遅く歩いてくださいと言ったら、難しいかもしれません。
苦しいかもしれません。
自分らしさを押さえつけられているように感じるかもしれません。
逆に、ゆっくり歩くことが一番楽な人がいます。
その人に、誰よりも早く走ってくださいと言ったら、やはり苦しいはずです。
焦ります。
疲れます。
自分の良さが出せなくなります。
でも、どちらが正しいという話ではありません。
早く走るから見える景色があります。
早く動くからつかめるチャンスがあります。
勢いがあるから突破できる場面があります。
一方で、ゆっくり歩くから気づけることがあります。
小さな変化に気づくことがあります。
落ちているものを拾えることがあります。
立ち止まる人の気持ちがわかることがあります。
早く走る人には、早く走る人の良さがあります。
ゆっくり歩く人には、ゆっくり歩く人の良さがあります。
本当に大事なのは、どちらか一方を正解にしないことです。
早い人に、ずっと遅く歩けと言い続ける。
ゆっくりな人に、ずっと早く走れと言い続ける。
それは、その人を大事にしているようで、本当はその人の性質を見ていないことがあります。
大事にするとは、相手を自分のペースに合わせることではありません。
その人がどんなときに力を出せるのか。
どんな場所なら自然に動けるのか。
どんな役割なら能力を発揮できるのか。
それを見つけようとすることです。
これはモノも同じです。
本来の使い道ではなくても、違うことに使ってみる。
別の場所なら、まだ役に立つかもしれない。
自分にはもう必要なくても、誰かには必要かもしれない。
壊れているように見えても、直せば使えるかもしれない。
道具としては終わっていても、資料として価値があるかもしれない。
服として着られなくても、生地として使えるかもしれない。
おもちゃとして遊ばれなくても、記録として残せるかもしれない。
「これはもう終わり」と決める前に、どこなら生きるかを考える。
それも、大事にすることです。
モノを大事にできない人は、人にも本当の意味で優しくできていないことがあります。
少し強い言い方です。
でも、かなり大事なことです。
モノを雑に扱うということは、そのモノの後ろにある時間や、人の手や、次に使う人のことを見ていないということでもあります。
作った人たち。
運んだ人たち。
売った人たち。
選んだ人たち。
直した人たち。
大事にしてきた人たち。
そして、今後使う人たち。
そこまで想像できているか。
大事にするとは、目の前の状態だけで判断しないことです。
「今、使えるか」だけではなく、
「どこなら使えるか」を考える。
「今、うまくいっているか」だけではなく、
「どんな場所なら力を出せるか」を考える。
ここに、本当の理解があります。
人に対しても同じです。
その人が今いる場所でうまくいっていないからといって、その人に価値がないわけではありません。
今の環境に合っていないだけかもしれない。
今の速度に合っていないだけかもしれない。
今の役割では力を出せていないだけかもしれない。
別の場所、別の役割、別のペースなら、その人の力がちゃんと発揮されるかもしれない。
だから、アドバイスも大事です。
「あなたはここではなく、こっちの方が向いているかもしれない」
「その力は、別の場所で使った方が生きるかもしれない」
「今のやり方が合っていないだけで、力がないわけではない」
そう伝えることも、優しさです。
否定するのではなく、可能性を移動させる。
これができる人は、人を大事にしています。
ただ褒めるだけではありません。
ただ守るだけでもありません。
ただ好きにさせるだけでもありません。
その人の力が、どこで一番生きるのかを一緒に考える。
それが、本当の意味で大事にするということです。
仲間づくりも同じです。
みんなが同じ速度で走る必要はありません。
みんなが同じ場所を見る必要もありません。
みんなが同じ方法で考える必要もありません。
早く走る人が見つけるものがあります。
ゆっくり歩く人が見つけるものがあります。
遠くを見る人がいます。
足元を見る人がいます。
すぐ試す人がいます。
じっくり考える人がいます。
声を出す人がいます。
静かに支える人がいます。
どちらかだけでは、見えないものがあります。
早い人だけだと、落としてしまうものがある。
ゆっくりな人だけだと、届かない場所がある。
だから、両方の意見を取り入れる。
早く走った人が見た景色。
ゆっくり歩いた人が気づいたこと。
止まった人が感じた違和感。
別の道を選んだ人が見つけたもの。
それを集めると、ひとりでは見つけられなかった良さが見えてきます。
それが、本当の仲間です。
同じペースで動く人だけを集めることが、仲間ではありません。
自分と違う速度の人を理解すること。
自分と違う見方をする人の話を聞くこと。
自分には見えなかった価値を、その人が見つけていると認めること。
それが、大事な仲間を作るということです。
大事にするとは、壊さないことだけではありません。
終わらせないことです。
決めつけないことです。
使い道を探すことです。
合う場所を探すことです。
違う良さを見つけることです。
モノにも、人にも、続きがあります。
自分の手元で終わらせない。
今の評価だけで終わらせない。
今の場所だけで終わらせない。
作った人たちのことを考える。
大事にしてきた人たちのことを考える。
今後使う人たちのことを考える。
別の場所で能力を発揮する可能性を考える。
それが、大事にするということです。
大事にする力は、優しさの一部です。
そして本当の優しさは、目の前だけで終わらない。
その先にある可能性まで、見ようとすることです。
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